床嶋佳子主演「緑のかげのなかへ」

banka-an2005-02-15


地人会の公演「白夜の国から ふたつの一人芝居」に行ってきた。

「緑のかげのなかへ」と「夫への日記」の二本立てだ。

「緑のかげのなかへ」の主演(一人芝居だから主演しかいない)は床嶋佳子さん。2月8日の日記で「きっと一週間以内に、またこの日記で床嶋佳子丈について熱く語ることがあろうと思う。」と書いたのはこの芝居のチケットを買っていたからだ。

劇場は江東区の「ベニサンピット」。

元は染物の工場だったらしい。「紅三」という名の染物会社の娘さんが演劇をやっていて、いつも稽古場所の確保に苦労していた。それを見たお父さんが「じゃウチの会社の使ってない建物があるから使うか?」と言ったのが始まりだそうだ。村上弘明石田純一らもここから巣立ったという伝説の劇場だ(いい伝説か悪い伝説かは評価の分かれるところだろう)。

詳しいでしょ? 先月、たまたま新聞に載っていたのだ。

扇型のスペースで「要」の部分にステージがある。キャパは100。結構見やすい良い小屋だ。


それはともかく、「緑のかげのなかへ」はよかったなあ。

一人の平凡な女性・ステラの一生を、その母の胎内にいるときから、赤ん坊の時代、少女時代、恋を知る娘時代、結婚、出産、夫との諍い、静かな幸せの再来、夫との別れ、そして本人の死までを約一時間で描いた一人芝居だ。

冒頭の胎児の時代の時には「一体、何が始まるのだろう?」とちょっと戸惑ったものの、ステラの成長とともに情が移って目が離せなくなる。娘のように思えたステラが恋人になり妻になり、母になる。

ステラが幼い日に母から受けた愛を同じようにわが子に注ぎ、祖母から受けた愛を同じようにわが孫に注ぐ。母が父を見送ったように、夫を見送る。自分が祖母を見送ったように、自分も静かに死に向き合う。この「輪廻」も感動的だ。

そしてタイトルの「緑のかげのなかへ」。不思議なタイトルなんだけど、この「緑のかげ」ってなんだろうと考えてみると、「人としての営み」、「愛」、そしてさっき書いた「輪廻」のことなんだと思う。生きるということはそれらの中に分け入っていくことに他ならないということなのだろう。

美しい、とにかく美しい芝居だ。まず主演の床嶋佳子さんが美しい。もとトップレベルのバレエダンサーだから所作が美しい。台詞も照明も音楽も美しい。つまりはトータルの演出が良いということに他ならない。

演出は浅沼一彦。


長くなった。続きはまた明日。