『夜にほほよせ』上映会&トークショー

banka-an2005-03-04


『夜にほほよせ』上映会&トークショーに行ってきた。渋谷のシネクイントでレイトショーだ。林静一画集「淋しかったからくちづけしたの」の刊行記念イベントで、画家の林静一さんが30数年前に監督した幻の作品。今夜限りの復活レイトショーだ。


監督・脚本が林静一さんで製作が巨匠・若松孝二。音楽がはちみつぱい(!!)


そんなわけで、上映前のトークショーは、林さん、松本隆氏、鈴木慶一氏という豪華版という。これは行かずばなるまいと楽しみにしていた。


上映直前に滑り込んだらエレベーターの中にぼんやりした輪郭ながら強いオーラを感じさせる白髪の人がいる。お顔をみたら鈴木慶一さんだった。崎陽件のシウマイのCMそのままの雰囲気。


ロビーに上がると凄い人込み。和服姿の林節子夫人を見つけご挨拶。相変わらず凄絶な美貌。となりにおられたのが歌人林あまりさん。こちらも2年ぶりくらいかな。初めてお会いしてから10年以上になるが、ほんとに全然変わらないかただ。


暫くして林さんのお嬢さんでデザイナーのルイさんも駆け込んでこられた。


「あら、今日はお嬢さんはご一緒じゃないんですか?」


と、ルイさん。そう、長女・花子(仮名・小5)も林ファミリーファンで、林ファミリー関連のイベントだとどこにでもついてくるのだ。


でも今日の映画は18禁。花子を同道するわけには行かない。


トークショーはこれと言ったテーマがあるわけじゃないんだけど、なんとなくこの映画が作られた1970年代初頭の空気のようなものが伝わってきて興味深かった。あと鈴木さんは「きたろう」に似てて、松本さんは野坂昭如に似てた。


さて、映画。出演は僕は知らない人ばかりなんだけど赤瀬川原平さんがワンカットでている。ストーリーに絡まないオカマの役で約2秒。場内爆笑。



あと林夫人の節子さんもワンカット出演されていた。さっきそこでお会いした人の30年前がスクリーンの中で動いているのはなんか不思議な感じ。



青春残酷絵巻と言うのだろうか。林さんの初期のマンガ作品「赤色エレジー」に通じるものがあるせつない物語だ。若さ、未熟さゆえの悲喜劇、不条理、そして悲惨な結末。



僕は初見。この映画が公開された1973年には僕はまだ13歳。この映画、さっき書いたように18歳未満は見れない指定だ。公開時のタイトルは「SEX予備軍/狂い咲き」。うーむ、これは13歳には見せられないな。



きっと当時はこういう映画にポルノの皮をかぶせてつくり、公開していたのだろうな。その内容はそこいらのポルノよりもよっぽど過激で危険なものだと思うのだけれど。



面白かったな。退屈しなかった。もう一度見たら林監督の細部へのこだわり具合をより検証できてさらに楽しめそうなのでもう一回見たいのんだけど、先に書いたようにこれは「一夜限りのレイトショー」。それはかなわない。


あ、言い忘れた。はちみつぱいの音楽も凄くいい。



終映後の会場では、青林工藝舎「アックス」編集部の皆さんに久し振りにお会いできた。呼ばれてないのに神保町の材木屋の二階にあった「ガロ」の編集部に遊びに行ってた頃からの付き合いだ。「さすが蕃茄さん、しっかりおさえてますねぇ」と冷やかされた。


ほんとはもうちょっとおしゃべりの一つもしたかったのだけど、なにしろレイト・ショー。涙を飲んで駅をめがけてダッシュで帰った。