「プロジェクトS」コンプリート!!

らく八さんの演目は「子ほめ」。大好きな噺。落語の面白さの基本だと思う。らく八さんの「子ほめ」は一年ぶり。声がよく通るようになった気がする。飄々としたいい雰囲気。

続いて志ら乃さんはお花見落語会に因んで「花見の仇討ち」。明るい芸風がいい。師匠の志らくさんのことや大師匠の談志さんのことが好きで好きでたまらないのがよく伝わってくる。途中、幹事仕事で抜けちゃったところもあるのだけど、お客さんの笑い声が受付にいても聞こえてきた。うけてるぞー。

ふと、廊下に目をやると、出番を待つ志らく師匠の姿。椅子に座って、じっと下を向いて集中を高めている。まるで剣客のような殺気だ。

そう思ったのは僕だけはなく、同じく幹事仕事で廊下にいたスタッフの怪力・一文さんもそう思ったそうだ。極真の黒帯で数々の試合経験を持つ武芸者である一文さんである。僕以上に感じ取ったようで、「足がすくんだ」と語っていた。

さて、真打登場で志らく師匠。ネタは「崇徳院」。恋患いの若旦那が色っぽくていいなぁ。テンポよく現代的なクスグリもちりばめて盛り上げていく。あとはサゲまで一気に怒涛の如く。


ここで仲入りとなる。仲入りの太鼓が終わったところで、場内アナウンス。このへんは僕と佐藤マネジャーの打ち合わせどおり。さっき僕が書いた原稿をスタッフのエミリー(仮名・編集者)に読み上げてもらう。内容はワインサービスのお知らせと、終演後のサイン会のお知らせだ。

サイン会は地元・増田書店にお二人の著書の出張販売にきていただき、終演後にそれにサインをしていただく寸法。でもせっかちな人が多く、増田書店のテーブルの前に列が出来る。大丈夫、さっきの幹事仕事でこの準備をちゃんとしていたのだ。

面白いくらいに本が売れていく。実は予定より多く入荷している。最初に僕が予想して注文した数字を見て、「もっと売れるよ」と増田書店のヒゲの店長が数字を大幅に上乗せしたのだ。さすが、プロの職人の目利きだ。僕が考えた仕入れ数では数が足りなくなるところだった。

ワインは「ガンテーワイン」の白の甘口。随分と美味しいらしい。評判は上々だった。

仲入はあっという間。エミリーに「間もなく開演します」のアナウンスを入れてもらい、佐藤マネジャーに開演のお知らせ。

仲入り後の主任ネタは志らく師匠の「死神」。大ネタだ。「死」という重〜いテーマをを軽妙に明るく演出して面白い。でも死神の灰色の暗〜い瞳は凄みがあって怖い。サゲは志らくさんだけのオリジナル。


終演のアナウンスもエミリー。サイン会とワインの販売の宣伝も入れ込む。アナウンスの効果もあって、お二人のテーブルの前に列が出来た。


志らく師匠を囲んでの打ち上げは大学通りの「権八」。そちらはマスオさんと二子国文治さんに任せて、残りのスタッフは撤収。なんだかんだで一時間近くかかり、後半だけ打ち上げに合流。

そのあと旭通りのジャズバー「キャンディポット」で二次会。


いやはや大変な一日だったが、終わった後のお酒のおいしさったらなかったな。

1月に始まった「プロジェクトS」はこれにて完了した。

つくづく僕は裏方が好きだと言うことを実感した数ヶ月だった。お客さんになれない性分なんだな。どこに行ってもデンと座り込んでお客さんになっちゃう人がうらやましくもあるが、僕は企画者側として忙しく立ち働いているほうがずっと楽しい。


宴席で席が近かったオヨベ先輩、アケミさん、エミリーと小さく乾杯して、

「なんか、学園祭みたいだね」

と笑いあった。