国立演芸場四月中席

banka-an2005-04-17


国立演芸場四月中席に行ってきた。コクリツである。クニタチではない。

落語会や義太夫の会で始終行っている小屋ではあるが、実は定席は初めてだ。仲良しの江戸家まねき猫さんにお誘いいただいて、長男・虎太郎(仮名・高1)と行ってきた。

開場時間に間に合うように計算して家を出たのだが、昼食をとった四ッ谷駅近くの蕎麦屋で、虎太郎が「もう一杯食いたい」なんぞ言って、天丼にかけそば2杯食べたりしたので予定より遅れてしまいヤキモキしたが、まあなんとかギリギリでいい席に座れた。

この興行の看板は主任(トリ)の桂歌丸師匠だ。「歌丸十八番噺」と称して得意の大ネタをかける。あまり寄席に出ない方なので貴重な機会だ。この興行でのネタは、

「質屋庫」「ねずみ」「竹の水仙」「井戸の茶碗」「火焔太鼓」

今日は「井戸の茶碗」。それにしても「なんでも鑑定団」なネタが並ぶ。


まねき猫さんはお馴染みお家芸の動物ものまね。今日の目玉は「河童」。そんな想像上の動物の物真似なんて、と普通思ってしまうところだが、まねき猫さんはネタの物語化がうまい。脊椎動物の進化からはじまり民俗学の資料を渉猟して河童の鳴き声を作り出し、妙な説得力がある。その声をここに文字化して再現することは不可能なんだが、なかなか幽玄な趣に満ちたものだった、だけ言っておこう。

それにしても「まねき猫」とはよく言ったもので、座布団に座った高座姿は見るからに縁起のいいまねき猫そっくりだ。ご利益はあらたかで場内は満員、立ち見がでるほど。大入り袋がでたという。


仲入りに楽屋口でまねき猫さんにご挨拶させていただき、虎太郎を紹介。記念に大入り袋をいただいて虎太郎大喜び。


さてプログラムも順調に進み、トリは歌丸師匠。ネタは「井戸の茶碗」。正直でまっすぐで気持ちのいい人物がたくさん出てくる気持ちのいい噺だ。

歌丸師匠は、テレビではそれこそガキの時分から見ているが、生は初めて。鶴のようなおじいさんで、枯れているといえば枯れているのだが、艶や色気が横溢している。声もよかれば姿もいい。


ああ、面白かった。国立の定席もなかなかいいじゃない。ただ惜しむらくはロケーションかな。新宿末広にしろ上野鈴本にしろ、寄席がはねたあと、小屋周辺のお店で蜜豆なんかつっきながら寄席の話でもう一回盛り上がれるんだけど、国立演芸場を出てもそこには最高裁砂防会館しかない。

しかし文句は言えない。この国立演芸場は先人たちの大変な努力によって建設された演芸場なのだ。かくなるうえは、最高裁にどこか山奥のほうに移転いていただき、その跡地に居酒屋や甘味屋、洋食屋や料亭など誘致する時代が来るのを夢見るとしよう。


それはともかく、貴重な機会を下さったまねき猫さん、ありがとうございました。