甲州旅日記13 教来石の教え、日本の美風

【2日目 その5】
やっとたどりついた「シャトレーゼ白州工場」は森の中にあり、建物の外まで甘い香りが漂ってくる。森の中にお菓子の家があるのかなって思っちゃう(柄にもなくメルヘンなことをいうんぢゃない。森の中に迷い込んで見つけるのは菓子の家ではなく、大抵「おかしな家」である)。


工場内はアイスクリームやケーキの生産ラインが見学できる。日系ブラジル人の工員さんが多いらしく、館内の貼り紙は日本語とポルトガル語が併記されている。途中にある社員食堂は見学客も利用できて、白衣に白帽の工員さんと家族連れの観光客が並んで昼定食を食べている。いい風景。そして美味そう。


工場見学は面白い。ゆっくり移動するアイスキャンデーの「カタ」の束にブルーの液体が注がれて、その「カタ」ごと冷却プールに沈みつつ移動する。その間に固まり、ポンっと排出されクルリンッと包装される。お見事。機械だけど。


見学コースが終ったところが天窓のある広場になっていて、ベンチとアイスのショーケースがある。試食コーナーである。ショーケースから自由に取って食べられる。放し飼い状態。ダイエット中の僕はソフトクリーム一つだけだったが、子どもたちは親の仇でもとるように次々と退治していた。スイカバー、モナカアイス、バナナアイス、etc.etc.


さて、次は即売コーナーである。試食コーナーでごちそうになって「得した」とホクホクして帰るという感覚は、日本の常識には無い(と思う)。下品である(と思う)。試食コーナーでごちそうになったのだったら、それなりに買い物して帰るというのが当たり前である。


美味しいものを食べたのだから、美味しい物を買って帰るのは当然。アイスクリームは買って帰れないけど、洋菓子和菓子を山ほど購入した。お煎餅も作ってるんだね、「甲州おかき 煮貝味」も購入。「苦い味」ではない、「煮貝味」である。


見るとほとんどの人が楽しそうにお菓子を買っていた。みんなの家の近所にもシャトレーゼはあるはずで何もここで買わなくてもいいのだけど、そこは心意気である。それに、せっかくの楽しい行楽である。こういうところで「得」などしたくないのである。だから手ぶらで帰る人などほとんどいない。


教来石曰く「(欲張ると)貪欲な武将として後世の物笑いになる」。教来石の教え、今に生きているのであるなぁ。嗚呼、日本の美風、今も死なず。



大時代だね、どうも。単に食い意地が張っているだけなんだけどね。