落研青春記 1   円生の謦咳に接する

(昨日の続き)

先輩方、とにかく洒落がきついのである。「明るく意地悪」なのである。


入学した時はちょうど桜の盛り。入学と同時に入部した僕は、落語研究会の花見の宴に連れて行かれた。そこにいたのが昨日も書いた4年の植竹公和先輩だった。前年の「清貧寄席(仮名)」の興行の時の話をしてくれた。11日にも書いたけど、「清貧寄席(仮名)」は学生落語を聞かせる発表会ではない。ちゃんと入場料を取って、プロの噺家さんが出演する落語会だ。


そうだ、前年の「清貧寄席(仮名)」のメンツの凄さにも打ちのめされたのだ。僕の入学の前年、先輩たちは九段会館の大ホールで円生、馬生(先代)、柳朝、小朝らを呼んでの興行を成功させていたのだ。20歳そこそこの学生が当代一流の名人上手の興行を打つ。ここでいきなり全国区のレベルを知ったのだった。


そして植竹先輩は円生師匠に出演交渉に中野のマンションに伺った時の様子を声色入りで聞かせてくれた。ギャラの額を聞いた後、あの目でギロッと睨むとニヤリと笑い一言、「お安いネ」と言われたそうである。そして馬生師匠が学生たちの話をニコニコと聞きながら焼き海苔に醤油をつけたのをツマミに熱燗を飲む仕草を演じてくれたのだった。


テレビ・ラジオにレギュラーを持ち、CMにも出演する人気芸人でもある植竹先輩熱演の仕方話である。大好きな落語家さんの謦咳に間接とはいえ接したのである。もちろん大感激。そして、「俺も3年経ったらこんな風になれるんだろうか」と不安にもなった。もちろんなれるわきゃあないのであるが。


(つづく)