NHK女優の謎  甲州街道徒歩(かち)紀行〈2〉

8月14日(木)初日の2

と、大袈裟な前振りで隣町・立川市に入ったわけだか、ほんの数分で日野市となる。日野橋を渡れば日野市である。

橋を渡ってすぐは旧・石田村。土方歳三の故郷だ。所縁の史跡も多い。写真などで見ると大変な美青年で人気があるのもうなずけるが、新撰組は好きじゃないから、所縁の史跡にも深い興味はもてない。素通りする。

素通りできないものがあった。

「NHK女優 辻純子」

という大きな看板。辻純子も知らないし、NHK女優ってのもわからない。あ、もしかしてこれ看板じゃなくて「表札」なんじゃないかと思ってすぐ下の家を見たが、別の名前の表札がちゃんとかかっていた。

先週の「予行演習」でガリガリくんを買ったコンビニで雨カッパを買う。僕たちの麦藁帽子に首に手ぬぐい姿を見た店のおじさんが、

「これからどこか行くの?」と聞いてきたので

「歩きで相模湖まで」と答えると、「ええっ? 大垂水(峠)越えかい?」と目を丸くする。「気をつけて行ってきてなー」。コンビニのユニフォームは着ていても要は酒屋のおっちゃんのFCオーナーだから実にフレンドリーである。口調としては「となりのトトロ」のクライマックスで、迷子になったメイを探すサツキが声をかけた草刈の農夫をご想像いただきたい。

このエリア、歩道は広く歩きやすいが別に見るものはない。工場や倉庫や配送センターが多い。9時過ぎに八王子市に入った。日差しがきつい。三吉が疲れ始めた。

「10時になったら休憩、アイスを食おう」

となだめる。

ダイエー八王子の前でちょうど10時。地下食料品売場でアイスを買う。東南アジア系の主婦2人の豪快な肉の買いっぷりに驚嘆しつつ、入り口のベンチでアイス休憩。ベンチはお年寄りの憩いの場となっていてはなはだしく場違い。

さらに西へと進み、ユーミンの実家の前を通り過ぎてさらに行くと千人町。八王子千人同心所縁の地だ。千人同心のことを三吉に説明するも馬耳東風である。

そうこうしているうちに卵量、じゃなくて多摩御陵。皇室のお墓である。それを越えると程なく高尾駅。ここから道が急に細くなって田舎道の風情となって、京王線の終着駅高尾山口駅となる。

これでもう正午である。9時すぎに八王子市に入って、正午となるのにまだ八王子市。なんて広いんだ八王子市。そしてこの先もまだまだ八王子市なのである。


ここで「甲州街道GO WEST作戦」はもいったん小休止。休憩時間に何をするかというと、高尾山にハイキングという酔狂な話なのである。


☆☆自宅からここまでの距離、約20.9キロメートル☆☆