東京で一番高い蕎麦屋で  甲州街道徒歩(かち)紀行〈3〉

8月14日(木)初日の3

高尾山のふもとまで来てちょうどお昼時となった。ほぼ計算通りである。これから東京で一番高い蕎麦屋で蕎麦を食べる。


むろん値段の事ではない、標高である。高尾山の登山道には山頂付近に至るまで数軒のお蕎麦屋さんがある。そこで昼食という計画である。割高だし特別に美味しいというわけでもあるまいが記念にはなる。

山腹までは2人乗りのリフトで登る。海抜224メートルの「山麓」駅から462メートルの「山上」駅まで。大人470円、子ども230円。

山腹にはカメラマンが控えていてサインを送ると撮影してくれる。自分では絶対撮れないアングルの写真なのでサインを送り撮ってもらう。撮ったとたんカシャカシャっとノートパソコンのキーボードを操作している。

山上駅に着くともう出来上がっている。便利な世の中になったものだ。600円。これを高いと見るか安いと見るかは人それぞれだが、僕は激安と思う。

天気が良いので展望台からの眺めも最高。新宿のビル群まで見える。感動していたら、すれ違った2人連れのおじさんが西の空を見て

「やばいなぁ、くるなあ。早く降りよう」

などと言っている。ほんとかなぁ、こんないい天気なのに。

とにもかくにも頂上を目指す。タコ杉やサル園を横目に見ながら名刹薬王院へ。参拝を済ませて地図で見て、ここが一番高いと思われる門前の蕎麦屋で、名物とろろ蕎麦を喫す。三吉は海老天うどん。東京で一番高い蕎麦屋で蕎麦を食べられて大満足。

ああ、喰った喰ったと店を出たら、やけに暗い。さっきのおじさんたちの言うとおりだ。山頂はあきらめて引き返しリフトの山上駅を目指す間にも、どんどん暗くなっていく。

ようやく着いた山上駅で響き渡るアナウンス、

「雷雲が近づいているので暫く運転を見合わせます」

リフトがだめならケーブルカーだ、とケーブルカーで下山することにした。ケーブルカーの駅に着いたら響き渡るアナウンス、

「雷雲が近づいているので暫く運転を見合わせます」

そのうち雨風がもの凄いことになり、稲光が走り雷鳴も鳴り響く大嵐に。幸い屋根のある場所に入り、椅子も確保していたのでのんびり待てたのだが・・・・。

なんとここで約2時間足止めを食らうことになるのである。しかも・・・。

退屈しのぎに見直した地図で、さっきの蕎麦屋のもうちょっと先にも蕎麦屋があったことが判明した。つまり僕たちは東京で2番目に高い蕎麦屋で食べていたのだった。

「一番も二番も変わんだろう」というなかれ。女子柔道の中村美里も言っている、金メダル以外はみな同じなのである。

運転再開しても大混雑でなかなか乗られずに、やっとのことで下山したときには、時計は午後4時を指していたのだった。嗚呼。


☆☆自宅からここまでの歩行距離、約23.5キロメートル☆☆