GO WEST! 甲州街道徒歩(かち)紀行〈1〉

そういうわけで、2泊3日の甲州旅行から帰ってきた。今回は究極のエコ旅行、徒歩での旅である。実はずっと以前からやってみたかった旅だったのである。

東海道を徒歩で踏破するというのは良く聞く話である。大好きなコラムニストの堀井憲一郎博士も弟子を連れて敢行されたそうである。

東海道も良いが、なんというか江戸趣味というか、悪く言えば衒学趣味があるように感じられてならない。それよりなにより僕自身にとって東海道というのはアンファミリアなのだ。

僕にとっての街道とは甲州街道だ。新宿の高島屋に行って下を見下ろしても「ああ、この道が谷保の天神様まで続いているのだなぁ」と思うし、諏訪湖の畔に立っても「ああ、この道が(以下略)」と思う。母なる川、ならぬ母なる道なのである。だから旧街道ではなく新道を行った。旧街道の旅にも興味はあるが、僕にとって母なる道ではない。大型トラックがビュンビュン行きかう甲州街道が僕の母なる道なのだ。


前々からしたかった旅なのであるが、家族持ちというのはなかなか一人旅というのがしにくいものである。それならいつもの手である。鶴澤寛也師匠に批判された「子どもをダシに自分の行きたいところに行く」の出動である。

3人の子どもの顔を見ていると次男・三吉(仮名・小6)が最適任だった。


同じように育てていても3人とも全くタイプが異なる。

長男・虎太郎(仮名・大1)は小さい頃から落語やお笑いに関してはどこにでも着いてきた。長女・花子(仮名・中3)はアートやアニメに関してはどんな展覧会でもついてきた。三吉はお笑いにもアートにも興味はないが、キャッチボールやジョギング、ウォーキングの相棒である。バッティングセンターも大好きで、地元のソフトボールチームにも所属している。

つまり、三人の中でフィジカルな部分では一番、根性が据わっていると期待できたので水を向けてみたのだ。

「とうちゃんと泊りがけで歩きの旅行行くか。一切乗り物に乗らずに甲州街道を西に向かい、山の中の小さい宿屋に泊まる、そんな旅だ。行くか?」

そんなに美味しい提案ではないが、「家庭サービス」の概念が薄い親の元で夏休みにイベントがなかった彼は喜んで手を挙げたのだった。

ツレも「私も行こうかしら」と言ったが、固く辞退しご遠慮願った。


そんなに無理をする気は無い。しかし…。東海道はたいてい街中を貫いているのだけど、わが甲州街道はその多くが山間の道である。そこがちょっと心配なのである。

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8月14日(木)初日

6時半に家を出る。朝早く町を歩くことに興奮する三吉。いつも僕が会社に行く時間だというとびっくりする。

大学どおりを南下して突き当たりは谷保駅。駅前のマクドナルドで朝食。家で朝食を食べてから行こうと提案したのだけど、「朝ごはんは外がいい」と強硬に主張する三吉。そのほうが「旅」な感じがするという。なるほどわからぬではない。

朝マックの後は南下して甲州街道へ。

と、そのまま西に向かうかといえばそうは行かない。街道を渡って谷保天満宮へ。旅の安全祈願をする。朝の神社の清浄感というのは実に気持ちがいい。

そしていよいよ甲州街道へ。ひたすら西へ向かう。朝七時にして日差しがすでに痛い。

20分ほど歩いた僕のなじみのブティック「ワークマン青柳店」のあたりまでが国立市。次の角からは立川市となる。

まずは隣町に入る。「散歩」から「旅」になった瞬間だ(大袈裟)。


☆☆自宅からここまでの距離、約4.7キロメートル☆☆