恵方より父の靴音


今日は節分である。


 恵方より 父の靴音 節分祭(せつぶんさい)  


という俳句がある。節分の夜に、

「お父さんが帰ってきたら豆撒きしよっと。お父さんに鬼になってもらって♪ 早く帰ってこないかなー」

と待っている幼子。やがて奇しくも恵方(その年の縁起のいい方角)から父の靴音が聞こえてきて、「あ、お父さんだ!!」とはしゃぐ子どもの姿が微笑ましく描かれているなかなかの名句である。


そんなわけで僕も靴音を響かせて帰ってきたわけである。今年の恵方は甲の方角。すなわち東北東。おおっ、我が家から見て駅は東北東にある。俳句をそのまま行っているではないか。これは鬼の役をやらねばなるまいなー。と帰ったら子どもらはもう寝ていた。起きていてももう豆撒きという年齢でもないか。

夕食の太巻き寿司を食べながらキッチンに向かって「鬼の役はもう卒業だね」などとシミジミ声をかけたらコンビニにでも行ったか、ツレはいなかった。いつのまに。


なんでぇ、いないのならいっそ「洗濯」でもしてこましたろかと悔し紛れにひとりごちた。