中村京蔵「雪振袖山姥‐むつのはなふりそでやまんば‐」(国立劇場)


小雨と強風のなか国立劇場へ。コクリツである。クニタチではない。


JR四谷駅から徒歩。上智大脇の土堤の桜がきれい。


新宿通り(最近は「麹町大通り」というらしい)を歩いていたら、強烈な視線を感じた。しかも無数の!!


かつら屋さんのショールームだった。


昔から、僕が小学生の頃からある寿司屋さん。


逆光でわかりにくいけど「江戸前 京風寿司 御所車」とある。江戸なのか京なのか間を取って浜松か。今は持ち帰り専門だけど昔はカウンターで食えた。



四谷から国立劇場は徒歩15分くらい。正面の桜がきれい。国立の桜(コクリツのさくら)。



豪壮な外観。「校倉づくり」風だっけ。



今日の演しものは「若柳秀次朗追善三年祭 吉蝶会」。日本舞踊の大きな流れである「正統若柳流」の「総会」的な舞踊の会だ。それに先輩の歌舞伎俳優・中村京蔵さんがゲスト出演され、お誘いいただいた。


京蔵さんは大学の先輩。会計ソフト「勘定奉行」のCMキャラクターとしても良く知られている。


    セピアカラーに加工してみました。



↓↓ あのCMを見たこと無い人はないとは思うけど念のため。↓↓



入院中、僕は病室の壁に京蔵さんのサイン入りポートレートをずっとお守りとして貼っていた。



        「吉野山」の「静御前



同行の (同好の) 映画監督・石川淳志さんとは客席で待ち合わせ。最近作「へんりっく」のトレーラーはこちら。




176センチの僕と183センチの石川さんが席に着いたとき、後ろのおばさんのため息を聞いた気がするが気のせいか。



京蔵さんが今回出演されたのは「雪振袖山姥‐むつのはなふりそでやまんば‐」。

面白かったなー、美しかったなぁ。


幕が開くと、そこは晩秋の足柄山。


そこに立派な武士に成長した足柄山の金太郎、つまり坂田公時(さかたのきんとき)が母を訪ねて里帰りしてきた。昔と変わらず美しく若々しい母にひととき甘える公時。至福の時。


しかしそんなはずは無い、あれから長い時間が経っているのに。果たしては母は足柄の魔物である山姥だった。おぞましき白髪の鬼女に変身する母・・・・。


おりしもそこに敵襲。力を合わせて撃退する母子。姿は変われど愛情は不変だった。意気揚々と凱旋する公時、また美しい姿に戻り優しく見送る母。しかし、二人は知っている、観客も知っている。これが永遠の別れであることを。


美しかったなあ、切なかったなあ。


皆さんは、死んだ人の夢を見たことがありますか? 夢の中で再会し楽しく甘美なひと時を過ごし、やがて目覚めと共に別れが来る。夢の中に戻りたいけど戻れない。戻ろうとする自分と戻れるわけ無いとあきらめている自分がいる。


そんな美しく、せつないお芝居だった。


京蔵さんはもちろんその大役、山姥を務めておられる。美しくかわいらしく、そして強い母。そして悲しい母。それを内面まで深く掘り下げ、見事に演じあげておられた。感激。


相手役の公時は、今回の興行のタイトルとなった先代の宗家・若柳秀次朗師のご子息で歌舞伎俳優の市川新十郎丈。成田屋らしい骨太で力強い所作が印象的だった。




楽屋にご挨拶に行った後、三宅坂から新宿行き都バスに乗り、新宿からは中央線で帰ってきた。



国立の桜(クニタチのさくら)、今日はこんな感じ。







<今日の一句>


かの人に 流す涙か 花の雨