バーティミアス 〜サマルカンドの秘宝〜

これは凄い本が出てきたなぁ。『バーティミアス 〜サマルカンドの秘宝〜』だ。

バーティミアス

これは凄い本が出てきたなぁ。『バーティミアス 〜サマルカンドの秘宝〜』だ。

 よく「世の中には人間は2種類しかいない。魔法使いを受け入れられる人と受け入れられない人だ」と言われる。確実に僕は後者だと思っていたのだけど宗旨替えだ。夢中になって読んでしまった。

  主人公のバーティミアスがいい。二流の妖霊なんだけど本人は一流のつもり。でもベテランはベテラン。経験に裏打ちされた凄みはある。でも総合点では間抜け。愛すべきキャラクターだ。
  北方謙三さんのハードボイルド読んだことありますか?かっこいいよね。そう、かっこよく感じさせるのが北方氏の力量だ。僕ら読者の想像の中では過去に傷を持つ渋い中年が活躍してるよね。でもそのキャラが、その台詞をしゃべっているのが凡庸なショボイオヤジだと想像したら・・・・笑っちゃうでしょ。バーティミアスがそれなの。妙に偽悪的かつ露悪的なのが笑える。だけどでもどこかカッコイイから不思議なんだよな。

  もちろん僕みたいなへそ曲がりな楽しみ方は例外であって、コアなファンタジーの読者の人が楽しめる作品であることは言うまでも無い。

  ネタバレしない程度にストーリーを書くと、舞台は現代のロンドン。でも設定は魔術によって動いてる社会。そこで泣き虫だけど妙にしたたかな魔術師のタマゴのナサニエル(12歳)とバーティミアスのでこぼこコンビが、超強力な悪徳魔法使いに挑むという物語だ。波瀾万丈の大冒険物語。

  著者は若手の注目株・ジョナサンストラウド。訳者はご存知、金原瑞人さん。全体を貫く軽妙なユーモア感覚は原作の魅力とともに金原訳の真骨頂だ。それでいて品格を失わないところがこれまた金原訳の独参湯だろう。
  ご当地ロンドンでは、ハリ・ポタの最新版を超える動きを見せていると言う。またハリウッドでの映画化も決まったらしい。

  ただし厚いぞ。615ページ。厚さも4センチある。通勤の満員電車で広げやすい本ではない。カバンにも入りにくい。
  だからたとえばクリスマスプレゼントや、年末年始にじっくりと自宅で読む本に良いんじゃないかな。1900円。お勧めです。