いい加減な人

今日、靴を買った。

常店ではなくて、月に二回ほど職場があるビルの「出店スペース」に店を出す業者さんだ。僕はこの店でよく靴を買っている。この前買った、オーツカ製靴の「LOBO」というビジネス・スニーカーも具合がよろしかった。

午前中、ちょっと外に出るとき、その靴屋さんは開店準備をしていた。端のほうの陳列棚に件の「LOBO」があったので見ていたら、開店作業をしていた中年の店員さんが声をかけてきた。

「お客さん、その靴いいですよ。オーツカ製靴、一流です。LOBOっていうですよ、軽くっていいですよ」

知ってますよ。今も履いてますから。

「ああっ!! そうか!!お客さんこの前LOBO買ってくれた方ですよねぇ。覚えてますとも」

いい加減なオヤジである。僕が買ったのはもう1人のピアスの若いアンちゃんからだ。アンチャンには妙に面が割れてしまっていて、遠くからでも僕を見かけると、「お客さ〜〜ん、幅広はいりましたよ〜、ハバヒロ〜!!」と大声で呼ばわるのだ。そうハバヒロハバヒロといわないでもらいたいものなのである。

それはともかく調子のいいおっさんである。でも、ぼくはそういういい加減な人が嫌いじゃないので、「あ、覚えてくれてましたぁ?」なんぞ言いながら楽しくお買い物ができた。

あいにくLOBOは品切れ中だったので別のものをテキトーに買った。

いい加減な人から買ったテキトーな靴は、なかなか履きやすかった。