そんなわけで、手拭いではなくフキンであることを鶴澤寛也師匠に看破されてしまった「市松模様」である。
この「市松」というのは、ご想像の通り、歌舞伎役者の名前である。人気役者の袴の柄がもとになっている。
瀬川菊乃丞の弟子の瀬川丑松という‥、それは「破戒」である。暗闇の丑松という‥、それは長谷川伸である。
佐野川市松という役者だそうな。「佐野川」なんていうと、古典落語に出てくる花魁(おいらん)か相撲取りみたいだけど、「市松人形」の由来でもあるそうだから、大層、綺麗で人気のある役者だったのだろう。
紺色と白の格子柄が「市松模様」である。
黒と白だと「市松」ではなく「チェッカー柄」となる。カーレースのゴールで振られる「チェッカーフラグ」でお馴染み(ほら「マッハGOGOGO」のオープニングの最後でさ‥)。ま、「市松模様」も「チェッカーフラグ」も似たようなものだ。白黒テレビで見たら同じだし。
だから、「退院の日には家の物干しか玄関の目立つところに、市松模様の手拭いかハンカチを吊るしておいてくれ」とツレに頼んだ。
「あら?“退院はゴールじゃないスタートだ”って豪語してなかった?」
あ、してました。いずれにせよ、はるか遠くだけど。