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４０代・企業管理職・女性に勧めたい本、１冊目は中勘介『銀の匙』（岩波文庫など）。
長く生きていればいろんなことがある。
そんな時、本が突破口になることはある。でも大抵は大人なら自分の中に、それまでの人生や経験の中に突破口、解答があるもの。そんな大人にお薦めしたいのが『銀の匙』。
一見、幸せだった幼年期を回想する甘美な砂糖菓子のようだが、その糖衣には高性能の内視鏡が仕込まれていて、自分に深く錘をおろし内面を見させてくれる。自分の中に埋もれている解決策を掘り出してくれるはずだ。
文章も平易で、疲労困憊でも泥酔していても読むことができる。そんな大人向けの本。読み終わるとちょっとだけ周りに優しくなれる。それがなにより本人への「癒し」。
前向きな言葉は時として傷んだ身を突き刺す。曰く「がんばろう」「くじけないで」。
それらを否定するつもりはない。それら前向きな言葉によって救われる魂も多くある。でも…。「…」の理由は上で書いた通り。
そこでおすすめが枡野浩一の『くじけな』。
いわく、
「くじけな／こころゆくまで／くじけな／せかいのまんなかで／くじけな／くじけな／くじけないでと／はげますあいのつよさに／くじけそうなときには／くじけな／くじけな／よし／くじけてよし／くじけたこころにしか／みえないものをみあげほほえんでいればよし」 (「くじけな」)
他にも「夢をあきらめな」「君は一人じゃな」等の作品の一つ一つが深く沁みいる。
つらいときはくじけてもいい。くじけてもいいとわかれば多分くじけない。くじけてなるかとがんばりすぎると、突然折れる。骨折は捻挫より重傷。
一見、悪洒落か単なる言葉遊びともとられかねないこの本、韜晦の向こうに苦く重い真実が見える。と思う。
２冊とも軽装で小さなバッグにも入り、満員電車でも読める。そこもお勧め。
<今日の１句>
「くじけな」と 凍える手指 包みをり
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