さて、先日来告知している、石塚公昭人形写真展「夜の夢こそまこと、ふたたび 江戸川乱歩2012冬」の件である。
メインはタイトルどおりに乱歩人形の写真なのであるが、展示物はそれだけではない。
「人間椅子」 である。
「人間椅子」といってもイカ天でデビューした文芸バンドではない。
石塚さんが構築した「乱歩ワールド」だ。
写真作品は下の画像。
小さくてゴメンね。大きいのはギャラリービブリオで見てください。「佳子」のモデルはこのブログではすっかりおなじみ、女流義太夫三味線奏者の鶴澤寛也さん。
写真はもちろん展示する。特別展示品はこの椅子の方。佳子が座っているこの黄色い皮張の椅子だ。
普段は寛也師匠の稽古場にあって、肩こり症の師匠の疲れをやさしく癒しているらしい。近所のタイ古式マッサージ「アユタ屋(仮名)」のセラピスト嬢たちも時々座りに来るという(未確認)。
今回の展示のために特別に師匠からお借りすることになった。「車で取りに行きましょうか」と行ったら「それには及ばない」とのこと。ふだんから重い太棹三味線を持ち運んでいるからご婦人としては力持ちなほうだがちょっと心配。
それからの特別展示は久作である。
嶋田久作ではない。ましてや百姓久作(野崎村)ではない。
夢野久作像の実物展示だ。
ただの人形ではない。アンティークの柱時計の中に封じ込められた久作像。
作品タイトルは『堂廻目眩(ドグラ・マグラ)--精神科学応用の犯罪とその証跡』
画像はこちら。
これを運ぶために先日、江東区の石塚宅まで行った。高さ1mを越える大物である上に、なによりこれは美術品である。宅配便ってわけには行かない。かといって美術輸送だと目の玉が飛び出る。そこでクッション性だけは高級車並みのクラウンワゴンで行ったのだ。
柱時計はオブジェではない、実動だ。毎正時にはあの狂気を誘う
「…………ブウウ――――――ンンン――――――ンンンン………………。」
が時を告げる。
そして・・・・。「ドグラ・マグラ」の巻頭歌に曰く、
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
そして「キチガイ地獄 外道祭文」の
スカラカ、チャカポコ、スカラカ、チャカポコ
それらもちゃんと仕込んである。アップ画像をご覧いただきたい。
さらに、である。
この「ドグラ・マグラ」の一応の舞台は九州帝大医学部である。
この展覧会では同大の当時の卒業アルバムの現物も展示しちゃうのだ。
「昭和6年九州帝國大學醫學部寫眞帖」
作中に登場する正木、若林両博士の写真もサイン入りで貼られている。そう卒業アルバムと言っても印刷物ではなく揃いの皮表紙のアルバムに、写真はプリントがそれぞれ貼られている。
そしてその編集委員の一人がその後、敗戦直前に身の毛もよだつ事件を起こす。それは「余談」としては重過ぎる事実だ。
石塚さんが古書店、オークションを渉猟して入手した超希少物件の初公開だ。
と、まぁ、こんな展覧会である。
「ビブリオ(=書誌学)」の名にふさわしい展示になると思う。
悪いことは言わない。ぜひおこしください。来ないと損です、たぶん。
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