「え? サタン?」
朝っぱらからリビングに素頓狂な声が響いた。
サタンとはおだやかでない。ただでさえ、世界滅亡の日が今日だ明日だ明後日だ一昨日だとかまびすしい昨今である。
長男・虎太郎(仮名・23歳・会社員)だ。新聞を広げて言った。
「大変だ、明日、サタンがやってくるらしいぞ」
見ると朝刊に挟み込まれた商店街のフライヤー。サタンじゃなくてサンタだ。
さらによく見ると、描かれているサンタのイラストは絵本作家の「つきおかゆみこ」さんのものだった。
つきおかさかんは国立在住。江戸のあそび絵などを下地にした楽しい絵本をつくっている。
去年、藤井輝明先生のご紹介で知遇を得た。
すぐさま「見ました!!」とメール。すぐに「ありがとう」とメールが来た。地元の作家と商店と消費者を結ぶこんな試み、いいね。
昼ごろからはラジオに張り付く。
TBSラジオ「土曜ワイド」、午後のゲストが三宮麻由子さんなのだ。三宮さんはエッセイスト。幼い頃に視力をなくされた方。類まれなる柔らかな感性で数々の本を著されている。著書一覧はこちら。 ←クリック
実は「落語通」でもある。
詳しいプロフィールはこちら。 ←クリック
一昨年の春、まさか一年後に市長になるなんて本人を含め誰も思わなかったガマさんを団長とする「国立組の八戸弾丸ツアー」ではご一緒させていただき、その「鳥寄せ」の妙技をノーマイクで聞かせていただいた。
ラジオ、聞けてよかった。いい番組だった。永六輔さん、外山アナを相手に最新の本の話や、自動車のバックソナーの技術を応用した「シーンレス(三宮さんの造語。視覚障がい者のことし)」用品のことなどを静かに、しかし明るく上品に語っておられた。さらに言うなら声がいい。アナウンサーと話してもまったく遜色がない。
また、近年の「杖を持った人」をめぐる発言には思わず膝を打った。同じく「杖の人」である僕も同じような目にあっているからだ。
詳しく書くときりがないけど、例えば「キャリーカートに杖を轢かれる」という危険。
僕のような歩行障害は体重を支えるのが目的だから杖の位置が体側に近いが、白杖は前方の様子を知るためのものだから体よりずいぶん前に杖をつく。一方のキャリーカートは体のずっと後方に引き摺られ神経が行き届かない。三宮さんは杖を轢かれ、折られたこともあるという(白杖は体重を支えるものでもないので軽量化のために華奢なつくりとなっている)。いうまでもないが、白杖を折られるということは、僕たちが雑踏でいきなり目隠しされたことにも等しい。
膝の打ちすぎで痛い、膝が。僕もキャリーカートに何度か轢かれている。だからキャリーカートのそばには寄らない。しかもヘッドフォンをしているバカモノ、失礼、ワカモノのそばには寄らない。
視力のある僕にはそういう対策ができるが、白杖の人にはそれができない。キャリーカートを使う人は本当に気をつけていただきたい。
そんなことを夕方、ともに三宮さんを知るキャットフィッシュのマスオさんと花緒ちゃんに話したらサタン、もとい左袒してくれた。
蕃ちゃんの故事つけメモ さ‐たん【左×袒】
[名](スル)《「袒」は衣を脱いで肩をあらわにする意で、中国、前漢の功臣周勃(しゅうぼつ)が呂氏(りょし)の乱を鎮定しようとした際、呂氏に味方する者は右袒せよ、劉氏(りゅうし)に味方する者は左袒せよ、と軍中に申し渡したところ全軍が左袒したという「史記」呂后本紀の故事から》味方すること。
「何としても上方の者に―する気にならぬ」〈福翁自伝〉(Yahoo国語辞書より)
そんなわけで、サタンに始まりサタンに終わった一日だった。
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