せっかく船越英一郎について語ったのだから、父・船越英二について語ろう。
今でこそ「ミスター・ポリデント」だがもともとは大映のニューフェイス。正統派の二枚目だ。
とは言え僕の世代ではその全盛期は知らない。
もっとも古くて「エプロン父さん」。男やもめの奮闘ドラマだ。69年ごろかな。
それから「雲のじゅうたん」で「へばちゃん(浅茅陽子)」の奉公先のオペラ好きの男爵(か何か)。リゴレットの「女心の歌」で美声を披露していた。
それから近年では「暴れん坊将軍」の「じい」。
いやいや何といっても決定版は「時間ですよ」だな。下町の銭湯を舞台にした人情コメディ。久世光彦の出世作だね。森光子と夫婦役。
何しろ舞台が銭湯である。今まで何度も書いたように僕の生家は銭湯だ。よく友達に、
「おまえんちもあんな感じ?」
と聞かれた。あいにく僕は商売にタッチする年齢ではなかったので確かな答えはできない。今は亡き祖母にでも聞けば・・・・・。
先月の1月22日の日記で、福岡の書店主・Oさんとのやり取りについて次のように書いた。
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僕とOさんはほぼ同じ年齢なんだけど、会うとかならず出る話題がある。「博多っ子純情」だ。ご存知、長谷川法正の名作マンガ。(中略)六平は高校でラグビー部に入る。高校のモデルは長谷川さんの母校だという。で、その連載時、長谷川さんの母校でラグビー部のキャプテンをしていたのがOさんなのだ。だから郷六平のモデルの一人といっても過言ではない(と僕は思う)。
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ところがその後、Oさんからメールをいただいた。「博多っ子純情」はあまり読んでおられないそうである。あまりに関係が近すぎで半ば近親憎悪的な気持ちもあって読めなかったそうだ。つまり僕の早合点だったのだ(そう言われてみれば僕一人でしゃべっていたような気もしてきた)。
祖母も「時間ですよ」を見ようとはしなかったなぁ。Oさんのような「近親憎悪的な気持ち」があったのかもしれないし、自分が苦労して築き上げてきたものを過度に戯画化した演出が耐えられなかったのかもしれない。
祖母のそんな屈託を露知らず、僕は屋根の上でギターを弾く日を夢想していた(嘘)。
そう、それより船越英二だ。大正12年生まれというからそれなりに高齢だがお元気なのだろうか。ちなみに、僕などはいまだに「かぁさん!」と真似ができる。