島敏光&ザ・ガラパゴスライブ

9日(金曜日)の深夜、帰宅したら自宅PCに一通のメールが来ていた。

「7月10日にジャズシンガーの故・笈田敏夫氏の息子 島敏光&ザ・ガラパゴスのライブを行います。お時間がありましたら是非!いらして下さい。」

「倶楽部六六食房」オーナーの是枝正美さんからのものだった「倶楽部六六食房」はこの日記でも何回か紹介したが、場所は国立駅から南に徒歩15分くらいの桐朋どおりぞい。カテゴリーで言えばダイニング・バー。壁を突き破る鉄人28号の外装でお馴染みの怪店だ。

  故・笈田敏夫氏と聞いては黙っていられない。僕は現在、最低月イチはジャズのライブに行く生活をしているが、僕がジャズ好きになったきっかけと言うのが笈田敏夫氏なのだ。

  父上ゆずりの正統派ジャズ・ヴォーカル、ビブラートを効かした低音が聴かれるのでは期待して乗り込んだ。
  
  開演時間ギリギリで飛び込んだら、ほぼ満席。ありゃりゃと思っていたら店奥の丸テーブルに映画評論家の山口正介さんが1人でおられて相席させていただく。ほどなくキャット・フィッシュ(=エソラ)の関マスオさんも来てテーブルは一杯に。待ち合わせたわけではないのだが「いつものメンバー」が揃った感じ。

  タキシードを着た中年男性が客席とステージの間を忙しそうに走り回っている。この方が島敏光さんのようだ。流石に血は争えない、タキシードが良く似合う。はじめはタキシードを着ていると気づかなかったくらい。それくらい身に馴染んでいるということだろう。

  島さんと親しげに言葉を交わすカウンターのお客さんの顔を見るとやけにイイ男。俳優の寺泉憲さんだった。

  開演時間となってバンドメンバーがステージに集まった。

  下の写真を見ていただければお分かりいただけると思うが、なかなか珍妙なスタイルだ。少なくともヴェルヴェットヴォイスでガーシュイン・ナンバーを歌い上げる感じではない。

  でも、ステージは愉快の一言。ウーン、どうカテゴライズすればいいのだろうか。
「オールディーズの流れをくむコミックバンド」
または、
「コミックバンドの流れをくむオールディーズ」
とでも言えばいいのかな。

  パット・ブーンを甘く歌い上げたかと思うと、「健康ランドの営業を断ってこっちに来た」という、やけに別嬪の女性演歌歌手が新曲の「どうすりゃこうすりゃ、すりゃすりゃりゃ」を歌う。ペンギンのかぶりもののベーシストが金ラメのジャケットに着替えて宮史郎の物真似で(顔がそっくり)「女の道」を絶唱

  途中でマジック・ショーも入る。マジックと言っても、一万円札に刺さるボールペンだとか、真ん中で切っても2本にならないロープだとか、デパートの手品用品売り場のレベルなんだけど、それがやけに面白い。マジックそのものより巧みな客イジリで場内を盛り上げる。さすが「ガラパゴス」、時代を超越した珍獣(?)揃いといったところか。

  バンマスである島さんは神出鬼没で、上記の「諸芸」を見ていて、後ろから甲高い笑い声がするから振り返ると、島さんが僕の後ろの席で大笑いしてたりする。そんな、勝手に出歩いていいんすか?

  また、MC(トーク)がやたら面白い。写真を見てわかるとおり手を骨折してギブスで固めていて、その事故の顛末を話してくれるのだけど、練り上げられた爆笑話ていうんじゃなく、聞くほうが努力して「オチ」を探すようなタイプの話。

  その一方でオリジナル曲「カシスソーダをもう一杯」はかなり聞かせる。ちょっと湘南サウンド風(サザンじゃないよ、加山雄三やワイルド・ワンズの系譜)の甘いメロディだ。バリトンの魅力で売った父上とは対照的なテノールで小粋に歌い上げる。

  なんかギラギラしていないところがよかったな。大スター・笈田敏夫氏の御曹司だという先入観があるからかもしれないけど、落語に出てくる遊び人の若旦那がそのまま芸人になっちゃったような感じ。努力や精進のあとを見せること見られることを潔しとしない感性。好きだなぁ。