瀋陽、右往左往 ホコリだらけの窓ガラスの向こうに機関車が・・・。

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・・・・・5月4日(3日目)の旅日記<6>・・・・・・


 あじあ号の雄姿


旧満鉄の花形特急「あじあ号」(機関車の型式は“パシナ”)に興味を持ったきっかけは、2冊の本だった。

満洲鉄道まぼろし旅行』(川村湊・ネスコ)と、『あじあ号、吼えろ!』(辻真先・徳間文庫)

満洲鉄道まぼろし旅行  
 『あじあ号、吼えろ!』


いつかは実物を見たいと思っていた。それが復元されて瀋陽にあると知ったのは数ヶ月前だった。

引退後、雨ざらしになって朽ちかけていた「あじあ号」は、日中の熱心な研究者の方々の尽力で修理されて、さまざまなドラマチックな紆余曲折を経て、瀋陽郊外「鉄西森林公園」の「蒸気機関車博物館」で静態保存されている。

しかし、不思議なことに「蒸気機関車博物館」、2年前にはその建物は完成したというのに未だにオープンしていないというのだ。マニアの方々もそこまで行き着いていながら、ガラス越しの邂逅で涙を呑んできたらしい。


そういうわけで、「ガラス越しでもいいや」とタクシーに乗りつけて、林の中に突如現れた「蒸気機関車博物館」の威容の前で、身震いをしていたのである。

これが一昨日までのおさらいね。


近づいてみる。出来てから二、三年ということだが・・・・。近づくにつれ、結構古びていることに気づかされる。空き家は住まないと痛むって小言幸兵衛も言っている。そこかしこに、いかにも「手入れが行き届いてない感」が横溢している。いや「手入れが行き届いてない」じゃなくて「手入れが無い」だな。かつては「あじあ号」が雨ざらしだったが、今度は博物館が雨ざらしだ。


でもいいや、ガラス越しにでも見られれば、と正面のガラスに張り付くと・・・、


おおーっ、目の前のガラスの向こうで、蒸気機関車がその鋼鉄の巨体を露にしているじゃないか。「あじあ号」か?!


鉄道に詳しくない僕にはこれがどういう来歴の機関車かはわからないが、「パシナ」じゃないことだけはわかる。じゃ「パシナ」はいずこ・・・。奥のほうに目を凝らすけど見えない。なにしろオープンしてないから照明がついてない。窓からの明るさだけである。

しかも・・・しかもガラスが汚れている。


これは仕方が無い。ぐるっと建物の一周して、窓から「パシナ」を探そう。

と思って廻り始めたが・・・。ダメ。窓の位置が高すぎるのだ。正面はアプローチの土台が一段上がっているから目の位置に窓があるけど、正面以外では窓の位置は地面から2メートルくらいなのだ。

これじゃ、アンドレ、馬場なきあと、中を見られるのはチェ・ホンマンとラジャ・ライオンぐらいである。


残念。せっかくうまく行って来たが、ここまでかぁ。ああ、もうすぐそこに「あじあ号」があるというのに・・・。窓越しすらだめか!!


とこのような父の悲嘆をよそに、三吉は相変らずこのだだっ広い広場で、クロスボーの試射に余念がないのであった。

   
           ( つ づ く )




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