瀋陽、右往左往うちの秘密兵器
ああ、結構ショックだ。じゃ、次は「11111」ね。頼んだよ!! 前後賞つきね。
・・・・・5月4日(3日目)の旅日記<9>・・・・・・
そういうわけで、二人の警備員、一人の官吏と押し問答をしてたのだが、埒があかない。こうなったら秘密兵器だ。
まずは相手の警戒心を解かなければならない。つまり僕は危ないマニアじゃない。自分だけのものにするためにモノを傷つけたり、盗んだりするような奴じゃないことを示さなければならない。
そして数日前のブログで僕は「第一子ども連れで不法行為が出来るわけ無いじゃん。」って書いた。つまりそういうこと。人って子ども連れだと善良そうに見えるんだよね。警戒心を解くんだよ。つまり子どもをダシにするの。
「子どもを連れてはるばるトーキョーから来たんですよ。ぜひ息子に蒸気機関車を見せたいと思って。機関車が大好きなんですよ。なっ!?」
と後ろを見やると、僕の秘密兵器・三吉がいない。あっ、と思ったら、裏庭でクロスボーの試射に余念が無かった。
三吉は機関車にはまったく興味が無い。
作戦失敗。
でも僕は見逃さなかった。仁王立ちする三人の後ろに鉄の扉があって、それが半開きになっていることを。そしてそのスキマの向こうに、巨大なる鉄の雄姿が、まさしく垣間見られることを・・・・。
「わかりました。中には入りません」
作戦変更。
「その代わりその扉を開けてください。そしてその扉のところから中を見させてください」
と言って、敷居(フラットだけど)を指差した。
白シャツ氏は渋い顔をして数秒考えていたが、オーケーを出してくれた。そして、敷居を指差して、「ここまでですよ」と念を押した。
「ありがとう!! おーい三吉」
秘密兵器たりえなかった三吉は、相変らず彼の秘密兵器のクロスボーの試射に興じていたが、目の届かないところに行って迷子になっちゃいけない。
「おーーい、三吉」
と呼び入れた。三吉がとんできた。
警備員Aの目がキラリと光った。
「なにそれ?」
「クロスボーです」
三吉が答える。
男の子と言うのは何歳になっても武器が好きな動物である。
「へー、カッコイイなぁ・・・」
急に場が和んだ。
チャンス!!
「ありがとう、じゃ、見せてもらいます」
僕は一気に敷居まで進んだ。
秘密兵器は、クロスボーだった。
(つづく)