《11月28日の旅日記から》
と言うわけで、猟師のKさん宅で「紅葉乱舞(鹿づくし)」をいただいていたのである。
聞きたいことは山ほどある。猟師さんの生活と言うのはどういうものなかのが知りたい。
まずは名称。よく東北の熊撃ちの猟師さんを「マタギ」なんていうけど、こちらではなんていうんですか?
「ししやまど」
んーと、どういう字を書くんでしょう。
「猪山人だね」
なるほどなるほど。KさんNさんは「猪山人」か。僕は「蕃茄山人」、似ている。いや全然似ていない。猪山人は猟銃を撃つが、蕃茄山人の打つのは相槌ぐらい。猪山人は猪や鹿を捕らえるが、蕃茄山人がとらえるのは言葉尻ぐらい。
猪山人かー。カッコイイなぁ。
「でもワシらは自分らのこと猪山人なんて言いかたせんよ。他所の人がそういうに呼ぶと言うだけや」
“人呼んで”ですね。ますますカッコイイなぁ。で、自分たちではなんて呼ぶんですか?
「名前は・・・ないなぁ。そんなこと考えたこともないわ」
ク、COOOOOL!!
ところで、罠ってどうやるんですか。やっぱり、踏むと鉄のハサミで足をガチャンと挟む・・・・。
「いやいやいやいや、あれはあかんわ」とNさん。
「トラバサミは法律で禁止されているんです」と弟君。あ、そうなんだ。さすが若いのによく知っている。じゃどうやって?
「それやがな」と工場の隅を指差すTさん。そこには太さ3ミリほどで先端を結んで輪を作ったワイヤーが何本も吊るされていた。隣には太さ2センチ長さ1メートルほどのスプリング。
で、それをどうやって使うか。NさんKさんに聞いたことを要約すると次のようなことである。
先端を直径30センチほど輪っかにしたワイヤーを地中に浅く埋める。逆の先端にはスプリングをつける。そのスプリングはグーッと伸ばして、先端を木に結び付けておく。その際、スプリングが伸びた状態を保てるようにテグスで細工する。そこに動物が来てテグスに触れるとスプリングが一気に縮み引っ張られるので、ワイヤーの輪っかも一気に縮み、足首を締めて木の上に引っ張り挙げると言うもの。
わかりにくかった? ごめんね。
方法はいろいろあるが大体この通り。でもテグスの細工は各家ごとに微妙に違い、ここが秘中の秘のようだ。だから僕の下手な説明ぐらいが丁度いいのだ
で、そんな仕掛けで獲れるんですか?
「獲れるから、今こうやって食うとるんやないかい(笑)」
うむ、それはごもっとも。でもむやみに仕掛けても獲れるものじゃないでしょう?
「そう。動物の通り道をいかに見つけるか。そこが腕の見せ所や」
NさんKさんクラスのベテランになると、山に入って現地を見れば、一目瞭然だそうだ。
つまり、地形の微妙なカーブや傾斜、陽の当たり方、草木の生え方などなど・・・。
「そういったものを見極める力、それが猟の腕前ってものの大部分やな」
こういう話を伺っていると、なんだか遠藤ケイのような気分になってくるなぁ。
〔明日に続く〕
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