今日の帰りの電車はラッシュと言うほどではないが、ちょっと混んでいた。僕も立って本を読んでいた。最後尾車両の最後尾だった。
突然、斜め前に立っていた若い女性の身体がグラッと傾いた。
あっ、倒れる!! と思った瞬間、僕の隣に立っていた中年のおじさんが、ガッと手を伸ばし、件の女性の肩を掴み、身体を支えた。連れなのかなとも思ったが、そういうわけでもなさそうだった。
「大丈夫か?」
とおじさんに声をかけられた女性、キョトンとしている。自分が倒れた瞬間の記憶もトンじゃっているらしい。でも数秒後には瞳がすぅーっと遠くなって、また倒れかけた。
ここからがおじさん、かっこよかった。「座らせよう」といい、そばに立っていた若いアンちゃんと、背の高い外人さんにテキパキと指示を出し、座る場所を確保させた(もちろん全員、アカの他人。あとでバラバラの駅で降りていった)。
身なりもあんまりよくないショボイおじさんだったのだけど、輝いていたな。
東小金井で降りていく後姿に、
「かっこいいとは、こういうことよ」
と、口の中で小さく賛辞を贈った。