瀋陽、右往左往 「K7397次」で

・・・・・5月3日(2日目)の旅日記<3>・・・・・・・

僕たちが乗ったのは「K7397次」。快速列車だ。改札を通ってホームに下りると黒っぽくて地味な列車が止まっていた。落差の大きいステップを登って乗車。

空いている席があったから座ったけど、当然、指定券を持った人が後から乗ってきたので立って行った。

中はそこそこの混雑。家族連れや若者のグループが多い。

外国で乗り物に乗るのは難しくはないが、降りるのは難しい。車内アナウンスを聞き取ることなど不可能だからだ。もちろん不案内の土地で降りそこなってしまったら大変なことになる。

そこで近くにいた二人連れの若い女性に筆談で聞いてみた。

「撫順まではどのくらいの時間がかかりますか?」

彼女の返答は、

「乗務員に聞いてください」

だった。なるほど。なかなか感じのいいお嬢さんで、ニコニコと「韓国人ですか?」と聞いてきたので、「日本人です」と答えた(瀋陽には朝鮮族が多い)。


次の駅の「瀋陽北駅」からはたくさんの人たちが乗ってきて、車内は朝の埼京線のような状態になった。この状態で降りられるかなぁ。

人が多くて外に景色も見られない。初めての満員列車体験に緊張気味の三吉はカバンに入れてあった「クレヨンしんちゃん」を読み始めた。

すると三吉の後ろにいた若者が三吉の背後から頭越しに読み始めた。「クレしん」は中国でも「蝋筆小新」として大変に人気がある(著作権関係でいろいろややこしいことになっているが)。

さらには僕たちが日本人だというのがわかると、小さな声で話しかけてきた。

「ドウモドウモ、ソウデスカー」

・・・・。答えようがないなぁ。


次の駅でほとんどの人が降りた。件のお嬢さんたちも「再見!」と手を振って降りていったし、「ドウモドウモ」のアンちゃんも降りていった。駅名はわからないが、遊園地と直結した駅だった。そうか、みんな遊園地に行くんだね。

すっかり空いてしまった車内。三吉も座れた。僕はようやく車掌に訊ねることが出来た。

「あと何分で着きますか?」

あと10分で着くからデッキで待っていなさい、とのことだった。デッキで待つのはいいのだが、デッキは喫煙室なので煙いこと煙いこと。


発車から約1時間。僕たちの乗った「K7397次」は目指す「撫順城」に着いた。さっきの車掌さんがここで降りろと合図してくれた。

降りる人はそれほど多くないが駅員がたくさんいて、10メートルおきくらいにいる。ホームは工事中で土がむき出し。屋根は骨組みだけ出来ている。


さて、撫順の町をどう攻略するか。

まずは、「撫順戦犯管理所」からだな。

   (つづく)


   下の写真は、撫順城を走り去る「K7397次」