ブンケンさんに会った

今日の朝11時ごろ、授業参観に行こうと中央線沿いの道を西に向っていたら、向こうから見知った顔の男性が歩いてきた。

「あ、ブンケンさんだ!!!」

山口文憲さんだった。

山口文憲(ふみのり)さんをご存知だろうか。名著『香港旅の雑学ノート』『香港世界』で知られるエッセイストだ。僕の香港好きは島尾伸三さんとともに山口さんの影響も大きい。

『読ませる技術――書きたいことを書く前に』は、好むと好まざるとに関わらず、人前に文章を晒す機会がある人には絶対お勧めしたい本だ。書きたいことを書くんじゃなくって、お客様の立場に立って読みたくなるような文章を書く技を惜しみなく開陳している。
読ませる技術 日本ばちかん巡り


それから『日本ばちかん巡り』もすごいぞ。日本全国にたくさんある新宗教の聖地の過激なルポルタージュである。阿ることなくおちょくることなく絶妙の立ち位置で書いている。よく無事に出せたと思う。抗議もいろいろあったらしい。それらとの対応も骨太で信頼感がある。

著書は少ないが、我が国を代表するエッセイストの一人だ。


「あ、ブンケンさん!!」

思わず声をかけた。7,8年ぶりになるだろうか。僕も驚いたけどあちらも驚いた。

「で、なんでこんなところ歩いてるんですか?}

と同時にいってしまった。国分寺に住んでおられて知人宅を訪ねた帰りだそうだ。以前は阿佐ヶ谷方面にすんでおられたが、そうか戻ってきたくれたのか。


ブンケンさんが静岡から上京してきて初めて住んだのが国立だ。国立音大受験のため。しかし浪人中に「べ平連」に関わり、脱走米兵をソ連に逃がす活動の運転手などやっているうちに受験は中断、本人も香港に逃亡し、そのままライターになったという伝説がある。9割までは本当らしい。

さっき我が国のエッセイストを代表する人の一人と書いた。でも「知らない」という方もいるだろう。それはこれまたさっき書いた「著書は少ない」ことに起因する。なぜ「著書は少ない」か。これはご本人もいろんなところに書いておられるから失礼を承知であえて書くが、「勤勉でない」からだ。精力的にいろんなところに書きまくるタイプではない。本当に気に入った仕事しかしないのだ。


またの再会を約して東西に分かれた。それにしても、うちの近所を雪駄ばきでチャラチャラ歩いていて、山口文憲さんに普通に出会えたりするのだから、国立暮らしも捨てたものじゃないのである。