オルト劇場・嵐山亭「志らく花緑二人会」

banka-an2005-07-03


 18時から新宿の明治安田ホールで?オルト劇場・嵐山亭「志らく花緑二人会」?。嵐山光三郎氏プロデュースによる落語会の第2回だ。「オルト」という健康食品の会社がスポンサーになっている。

 キャットフィッシュ(=エソラ)のマスオさん、怪力・一文さん、東京シティフィルのフルート・海治さんら国立組とは現地で待ち合わせ。

 立川志らく柳家花緑という、今最もイキがいい二人の競演である。場内は満員。補助椅子が出るくらいだった。

 緞帳が開くとアロハにパナマ帽の嵐山氏。満面の笑みで「都議選は投票率が50くらいだそうですが、こちらは100パーセント、満員です」と場内を和ませる。

 開口一番は志らく門下の立川志ら乃さん。僕らが3月にやらせていただいた「プロジェクトS」こと「国立志らくの会〜国立お花見落語会〜」の時もご出演いただいた。その上、高座作りにも貴重なアドバイスをいただいたのだった。


 今日のネタは「粗忽長屋」。そう「抱いてる俺はいったい誰だろう?」である。立川流では「主観長屋」というらしい。

 面白かったなぁ。今まで聴いた志ら乃さんの中でも一番よかったかも。マクラも面白かった。31歳になって役所に身分を証明するスベがなかった話を自虐ネタっぽくやってたんだけど、ハンコ主義の日本社会や戸籍制度を小気味よく風刺していたようにも思う。熊さんじゃないけども「自分が自分であること」を証明するのって凄く難しいんだなぁ。


 続いて、志らく師匠。ネタは大ネタの「たまや」。志らく師匠のオリジナルだ。映画に題材をとった「シネマ落語」で、本ネタは、「天国からチャンピオン」だ。暴れ馬に蹴られて死んだ花火職人が神様に許されて現世によみがえり大きな花火をつくり、そして淡い恋もする・・・。というストーリーだ。

 噂には聞いていたけど聴くのは初めて。一文さんと「いい話だねぇ」と言い合った。そう、いい話で、なおかつ全然臭くない。言うならば爽やかな感動。臭くならないのは、志らくさんのスピード感の効能だろう。引っ張ろうと思えば引っ張れる「いい場面」も惜しげもなくサラリといく。粘らない。このスピードが鈍ければ途端に臭みが出ると思う。食べ物も落語も鮮度管理が重要ということか。キャラクターでは実直な「玉屋」の親方がよかった。

インターネット配信で自宅のPCで見られます。無料サンプルでも雰囲気だけはわかると思う。


 仲入り後は「文化講座」と題して、嵐山氏と両師匠のトーク。その内容は詳しくは書かない(書けない)けども、もちろんあの話題もでた。

 トリは花緑さんで、ネタは「中村仲蔵」。これも大きい噺。忠臣蔵五段目の定九郎のあの型をつくった名優・中村仲蔵の芸の精進ぶりを縦糸に、夫婦愛を横糸に描いた名作だ。スマートで美男な花緑さんが歌舞伎役者の噺をするというのがいい。定九郎の型のモデルとなった雨宿りの若い武士の描写など、その姿が目に浮かぶようだった。

 帰りの電車の中は、国立組4人で落語の話で盛り上がり、新宿→国立間はあっという間だった。

 海治さんが昔、今もご健在な大真打にフルートの個人レッスンをしていたという話にはビックリだった。