競馬の本なのにおもしろい

何度か書いたと思うけど、僕はギャンブルが苦手だ。嫌いというより苦手。何度か試してみたけど熱くなれない夢中になれない。こういうものに熱くなれたら人生楽しいだろうなとは思うけど思うだけ。

もちろん負けると悔しい。だけどたまに勝ってもそれほど嬉しくない。もともと研究熱心な気質じゃないから深入りできないということもある。

またギャンブル同様にスポーツも(スポーツの話題も含めて)不得手だから、たまに仲間同士で喫茶店とかに行ってスポーツ新聞の回し読みをしたりしても、読むところが無くてエロ記事を眺めていると助平だといわれたりするという理不尽な現象もあるのだが、それはまた別の話だ。

そんな風にギャンブル十八般が苦手な僕だが、この本はおもしろかったなぁ。

元木昌彦著『競馬必勝法放浪記』(祥伝社

競馬必勝放浪記


競馬歴40余年の著者がこれまでの競馬人生の中で出会った、競馬名人たちのそれぞれの必勝法とそれと表裏をなす人生模様を描いた好エッセイだ。カリスマ編集者である著者だけに出会った「競馬名人」というのも、山口瞳大橋巨泉寺山修司色川武大本田靖春、等々と超豪華。

中でも山口瞳氏とのエピソードには多くのページを割いている。競馬以外の話題でも、代表作の『血族』の取材に同行した話などファンにはたまらないエピソードだ。

他にも、それぞれ名人たちのそれぞれの「勝負の仕方」はまさに人生への対峙の仕方そのもので、“拗ね者”本田靖春氏との交流のエピソードなどは涙無しでは読めない感動ものだ。

さすがに巻末資料の「元木流必勝法」は、競馬音痴の僕にはまるでチンプンカンプンであったが、他のページは面白く、愚直な姿勢にはこちらも背筋が伸びる思いだった。

これからも僕が競馬をやる可能性は限りなく低いと思うのだけれど、この『競馬必勝法放浪記』は忘れられない一冊になりそうな気がする。