午後、旧知のTさんご来廊。
今、僕はこうやって「ガロ展」などを企画しているが、それの元を辿ると中学二年生に辿りつく。
小学6年生頃から公民館の図書室に通うようになった。そのころから大人向けの本を読むようになったのだ。素九鬼子『旅の重さ』、邱永漢『西遊記』、稲田耕三『高校放浪記』、ジャンルはバラバラだけどその辺が当時夢中になって読んだ本だ。みんな公民館で借りた。
中学2年の頃だった。公民館図書室の片隅で漫画全集を見つけた。筑摩書房の『現代漫画選集』。編者は鶴見俊輔、佐藤忠男、北杜夫。当時の進歩的文化人。
選集のラインナップは、横山隆一、横山泰三、加藤芳郎、小島功、東海林さだお、白土三平、水木しげる、手塚治虫、石ノ森(当時、石森)章太郎等々。
多分、手塚、石森、水木あたりの読みなれた物を読み終わって、ふと手にしたのが「つげ義春」の巻だったろうと思う。
とたんにそのまま40年治らぬ熱病になった。
それが本企画で展示しているこの本。その後、古書店で入手した。
つまりこの本がすべての始まりだった。本というものはかくも簡単に人生を変える。
そんな話を件の、今日来られた「旧知のTさん」にした。
Tさんこそその当時の公民館図書室の係のお姉さんだ。今はもう退職されているTさんはニッコリ笑って、「ええ、私が仕入れた本です」とおっしゃっていた。
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