越南点描〈8〉 ベトナム下駄騒動


出発前、ツレにお土産は何がいいかと問うと「アオザイが欲しい」とのこと。


残念ながらアオザイは基本、オーダーである。カラダにぴったりフィットのものだからね。なんでも身体の16箇所を採寸するそうである。16ですよ16。16箇所の採寸だなんて、CTスキャンする方が手っ取り早そうな話である。


それならとガイドムックのカラーグラビアをめくっていた彼女が指差したのは、木のサンダル。いやサンダルと言うよりも「便所ゲタ」だな、これは。


今はあんまりみられなくなったけど、以前はプールとか公共施設のトイレによく備え付けられていた。これでタイルの床を歩くとカンカンと実にけたたましい音がする。それを買って来いという。みれば便所下駄ながらなかなかデザインもおしゃれでかわいい。


常夏の彼の地ではどこでも売っていた。市場、お土産屋から空港売店までどこででも。

僕はホーチミンのナイトマーケットで買った。ベトナム人に珍しくグラマーなおばさん(と言っても僕より年下だけど)とその子どもである若い兄妹の店。


セミオーダー商品でボディーと鼻緒を選んでその場で作ってもらう。せっかくだからツレのと長女・花子(仮名・中3)のをオーダー。ボディーはお揃いの螺鈿細工で鼻緒を別のものにした。可愛い花柄のビーズの(下の写真のもの)と、シックなパールの2種類。あえて逆を打ってツレに花ビーズで花子にパール。


鼻緒の位置にドリルで穴を開けクギで止め、底にはゴムをタッカーでつける。二つオーダーしたのを3人で見事な流れ作業・・・と行かないところが面白い。道具が足りないのか、お互い邪険に道具を取り合いながら作業している。


プラスティックの椅子に腰掛けて出来上がりを待つ。約10分間。値段は2足で8アメリカドル。


ツレは結構気に行ったようで、外で履くのはもったいないと現在、リビングでの室内履きにしている。外で履くのはもったいないというより、外は寒くて下駄のシーズンではないと言うのが実際であろう。それはいいのだがリビングは2階、寝室は1階。寝ていると頭上でカンカン音がする。ゴムが貼ってあるとはいえ下駄は下駄。


昨日は誤って次男・三吉(仮名・小6)の足を踏んでしまったらしく、大騒ぎで揉めていた。そりゃ裸足で下駄に踏まれれば相当痛い。ゴムが貼ってあるとはいえ下駄は下駄、である。