オカリナ

長女・花子(仮名・小六)が部屋に入ってきて、オカリナを貸せと言う。確かに僕はオカリナを持っている。吹けやしない。工芸品として持っている(音が出ないとか言うわけではない。僕に素養がないだけ)。笠間の江春窯・平本陶坊の作品だ。

それをなぜ花子が借りたがるかというとバカバカしい。最近花子はハリー・ポッターとかバーティミアスとかダレン・シャンとかの、いわゆるロー・ファンタジーに凝っている。

それらによく出てくるのが「悪魔の召還」である。悪魔の召還に凝っていて、その手の映画はないかとレンタルビデオ店に行って借りてきたのが『悪魔くん』である。水木しげるである。

まあ、はっきりいってちょっとハズしているのだが、見てみると大層面白く(当たり前である)、すっかりハマってしまったのだという。

悪魔くん』の得物といえばオカリナである。そこで僕がオカリナを持っているのを思い出したらしい。

「貸してもいいが、吹き口からスティックが生えて武器になったりはしないぞ」

と軽口を言うと、

「わかってるよ!!」

と言いながら自分の部屋に持っていった。暫くするとピーヒャラピーヒャラ、ヒャリコヒャラリロと笛の音が聞こえてきた。通りすがりに、

「吹いてもいいが、メフィストは出てこないぞ」

と言うと、さっきより大きい声で、

「わかってるよ!!」