歌舞伎座さよなら公演グランドフィナーレの話題の続きである。
いよいよ開幕時間となった。
演目は「助六」。「助六由縁江戸桜」。僕が一番好きな芝居だ。江戸のかっこよさがすべて詰まっている。
配役がすごい。このラインナップを見ただけでもう眩暈。
揚巻 坂東玉三郎
意休 市川左団次
通人里暁 中村勘三郎
福山のかつぎ 坂東三津五郎
くわんぺら門兵衛 片岡仁左衛門
甘酒売 尾上菊五郎
助六は他の人も演じるけど、やっぱり市川宗家のものだなぁと思う。
僕が記憶の範囲で初めて歌舞伎を見たのはテレビだったのだけど、それがこの助六だった。演じていたのはもちろん団十郎丈、当時の海老蔵だ。僕は8歳だったんじゃないかな。助六の真似をしてうちの中で、
「股ぁくぐれぇ!!」
を連発して家族を閉口させた。もちろんくぐる人もいなかったが。
今回、団十郎丈の助六を楽しみにしていたったのはもちろんだけど、それとともに僕が楽しみにしていたのが、勘三郎丈の「通人・里暁」。
これが実に品のいいコメディ・リリーフで、助六に股をくぐらされるんだけど、その時代時代のギャグを織り込んで笑わせる役どころだ。悪ふざけに関して、現在の梨園で中村屋の旦那にかなう人はいない。笑わせてホロリとさせて、大当たりだった。
この通人里暁、先の河原崎権十郎の当たり役だった。僕がテレビで見たときもこの人だったと思う。
「アッとおどろくタメゴロー!!」
そしての股をくぐるときちょっと上を見上げて発する言葉が、
「オー、モーレツ!!」
だった。
僕が見た年齢を8歳と特定するのは、この二つの言葉が流行した年が1969年だからだ。
あと、書いておかなければならないのが中村京蔵さんのこと。僕の歌舞伎研究会の先輩で「勘定奉行」のCMキャラのあの役者さんである。
このお芝居にも出演されている。
揚巻付きの振袖新造の役。つまり花魁の太夫である揚巻の世話をする後輩の女郎の役。その二番手ぐらいかな。京蔵さんがでている間はつい、京蔵さんばかり見てしまった。
それは僕の周りも同様で、同門の誇りである。皆のオペラグラスは、舞台下手の藤色の着物をロック・オンしていたね。
上演時間は約2時間。でもあっという間だった。
いい機会をいただきました。A先輩、ありがとうございました。学生時代、多いときは月に2,3回お世話になった歌舞伎座に、ちゃんとお別れをいえました。
3階から出口に向かう通路はいつもの大渋滞。何しろ構造が古いから、「動線」なんてものはまるで考えてなくてボトルネックで渋滞が起きる。
ようようのことで歌舞伎座から吐き出されて・・・。もう一度振り返って歌舞伎座に別れを告げた・・・・・いところなんだけど、そとは氷雨。振り帰ることも出来ずに、地下鉄への階段に吸い込まれてしまった。
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